通信の切断、治安部隊の出動、反国王派の監禁・拘束など、混迷続くネパールからの現地リポート。
4月26日(月曜日)
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| カトマンズのラトナ公園で演説をする学生リーダー、ガガン・タパ。 | |
朝8時半、知り合いの学者と王宮に近いレストランで会う。ヨーロッパのある国の援助団体の女性も同席する。先日の、ピュータン郡での取材の様子を話し、話題はインド政府の軍事援助再開に及んだ。今日は、ほとんどの日刊紙が、インドのテレビ局NDTVが、「インド政府が無条件でネパールへの軍事援助再開を決めた」というナトゥワル・シン外相の発言を報道したニュースをトップで伝えている。24日にジャカルタでギャネンドラ国王とマンモハン・シン首相が会見したあとに決定されたのだと、シン外相が帰国する飛行機のなかでNDTVの記者に対して話したらしい。ギャネンドラ国王が「早期に民主的プロセスに戻る」ことを約したことに基づく決定だというが、本当だろうか。インド政府は国王による政変よりもマオイストの問題を深刻に受け止めたためだという。あまりにも安易な方針転換。マオイストの脅威は“政変”以後の3ヶ月間で、それほど変化したとも思えない。政変後、拘束された政党リーダーのほとんどは確かに釈放されたが、新たに拘束された学生や活動家も大勢いる。ネパールの政情がそれほど変わったとも思えない。インド政府が国王の口約束だけで方針転換をするとは、どうしても信じられない。インドの現連立政権に参加するインド共産党からは、シン外相の発言に対する大きな反発が出ているようだ。このまま簡単に援助を再開するとも思えない。
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| マスクをした私服警官が蹴破ったUML本部内のドア | |
正午にバルクーにあるUMLの本部に行くと、他党のリーダーたちも来ており、昨日の出来事に関する説明をしているところだった。玄関前で見知った政治家何人かに会う。メディア関係者はあまり大勢は呼んでいないらしい。記者会見というよりは、説明会という雰囲気だ。政党リーダーへの説明が終わったあとに、スポークスマンのプラディプ・ネパールがメディアへの説明会を開いた。まず、スポークスマンが今回の出来事について、「昨日、20から25人の私服警官が、わが党の建物内に入って蛮行を働いた。これは非常に危険な兆候を示すものである。なぜなら、彼らは全員がマスクをして顔を隠していたからだ。議会制民主主義の国では起きてはいけない事が起こった」と強い懸念を示し、昨日の事件の目撃者であるラジェンドラ・パンデとゴパル・シャキヤの2人の中央委員が具体的な状況説明をした。彼らの話と説明会で配られた声明によると、事の詳細は以下の通りである。
昨日は午前10時から午後1時まで、党本部の敷地内にアディカリ夫人の遺体を安置した。他党のリーダーも含めた大勢の人が訪れたが、警官は献花をすませて戻る人たちのバイクや車を止めて、顔をチェックしていた。午前11時ごろ、献花に来たNSUのケサブ・シン会長をUML本部の門の前で警官が拘束。さらに献花をして戻る途中の人たち約11人が乗った車をカリマティで止めて拘束した。アディカリ夫人の遺体を荼毘に付すためにパシュパティナートに運んだあと、午後4時ごろ、顔をマスクで覆った20から25人の男たちが党本部の建物に侵入。ANNFSUの学生をつかまえて、「お前はヨゲシュ・バッタライか」とピストルをこめかみに突きつけて聞いたという。もう1人には殴りながら「お前はキムラル・バッタライか」と聞いた。男たちは、建物のなかを2人を探して、書記長の部屋や図書室をまわり、いくつかの部屋のドアを棒でたたいて、トイレのドアを破った。このあと、ゴパル・シャキヤらが「あなたたちは誰だ?」と聞くと、男たちは「警察だ」と答えた。「令状はあるのか」と聞くと、「令状はない。指示を受けてきた」と答えた。党員が集まって抗議を始めると、男たちは出て行ったという。
この男たちは本当に警官だったのかどうか聞くと、目撃者は「彼らが青い警察のバンから降りるのを見た。門の前には制服警官もいた。ピストルと無線機を持っている人もいて、無線機で“DSP(副警視)”と呼んでいるのも聞いた」と話す。しかし、彼らのなかに“マンダレ”(パンチャヤト時代からのギャング)が混じっていた可能性もあると言う。
確かにこれは尋常な出来事ではない。彼らが本当に警官であったとしても、なぜに顔をマスクで覆ったりするのか。まるで、犯罪者と変わらない。警察がこんなギャングのようなことを始めたら、この国は本当に無法地帯となってしまう。いや、もうすでに無法状態にあると言っていいのかもしれない。実に恐ろしい話である。
昨日の日刊紙に、西ネパールのロルパ郡で治安部隊が今までにない大規模なマオイスト掃討作戦を始めたという記事があった。ダン郡、サリヤン郡、バグルン郡に駐屯する治安部隊がロルパに行って、陸と空から“攻撃”を始めたらしい。マオイストの“首都”タバン村やガルティガウン村、コルチャバン村でヘリコプターからの空襲を展開していると言う。どの村も私が取材で行ったことのある村だ。それぞれの村で会った村人たちが無事だろうかと心配になる。昨日夕方、ロルパをカバーする某日刊紙記者が電話をくれた。掃討作戦のことを聞くと、大勢のマオイストが死亡した可能性があると言う。これまでのところ、政府側は何の情報も報道していないが、それは作戦が今も進行中であることを示す。治安部隊はタバン村やガルティガウン村にキャンプを設置して、長期間駐屯するというニュースもあった。「バブラム・バッタライ処分事件」でマオイスト党内に動揺がきているところを、すかさずに攻撃するという戦略なのだろう。
インドの出方、マオイスト党内の分裂、主要リーダーの逮捕など、さまざまな不確定要素が絡んで、事態はますます予測困難になっている。

