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速報
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ネパール 非常事態宣言! 小倉清子の緊急手記 第29回(05/07/29)
 2月1日、ギャネンドラ国王が非常事態宣言を発し、全権を掌握したネパール。国際電話、インターネットなどの通信は遮断され、カトマンズ在住の小倉清子との連絡も途絶えた。2月8日、ようやく通信が復活。
 通信の切断、治安部隊の出動、反国王派の監禁・拘束など、混迷続くネパールからの現地リポート。



7月26日(火曜日)
 ネパールで初めて、首相経験者が実刑判決を受けた。2月1日の政変後、ギャネンドラ国王の任命により発足した汚職統制王室委員会が、シェル・バハドゥル・デウバ前首相とプラカシュ・マン・シン前建設相に対して、メラムチ水供給開発プロジェクトに絡んだ汚職容疑で有罪として、2年間の実刑と9000万ルピーの罰金を課したのだ。デウバ首相は民主化後に3度首相を務めた。2002年10月8日と今年2月1日に、2度も国王により罷免されたという特異な経験をもつ政治家でもある。

判決後、記者団と話すデウバ前首相
シン前建設相
判決は午後2時から、プルチョークにある王室委員会で公にされることになっていた。しかし、委員会のメンバー3人がなかなか現われず、約1時間遅れて始まった。24日の聴聞会では、椅子が全部埋まらず、取材する記者も少なかったが、さすがに、今日は50人近い記者が判決を聞きに訪れ、椅子が足りずに私服の警官が何度も追加の椅子を運び込んでいた。委員会のメンバー3人が席に着くと、白いダウラ・スルワルに黒いジャケット姿のデウバ前首相と、白いシャツに黒いズボン姿のプラカシュ・マン・シン前建設相が現われた。2人とともに訴えられている4人(ティカ・ダッタ・ニラウラ前建設省次官、メラムチ・プロジェクトのドゥルバ・バハドゥル・シュレスタ総局長、同プロジェクトのディーパク・クマール・ジャー局長、建設業者のジプ・チリン・ラマ)はなぜか姿を現さなかった。王室委員会のバクタ・バハドゥル・コイララ委員長が判決文を読み上げる。マイクがないうえに声が小さく、しかも扇風機の音に邪魔されて、非常に聞きにくい。

 判決文を読み上げるのを聞いて、驚いた。汚職容疑はプロジェクト開始当時から問題のあったメラムチ水供給開発プロジェクトで、メラムチ川からカトマンズ盆地に水を引くトンネル工事の現場までの道路建設事業に絡んだものである。まず、デウバ前首相は政治的権威を悪用して、不適当な建設業者に入札したとして有罪判決を受け、2年間の実刑プラス、4500万ルピーの保釈金と同額の4500万ルピーの弁償金を言い渡された。保釈金を支払わなかった場合、さらに4年間の実刑が加わる。シン前建設相とニラウラ前建設次官、シュレスタ総局長も同様の罪で、デウバ首相と同じ2年間の実刑と9000万ルピーの罰金が課せられた。ジャー局長は、建設業者に関連した偽の書類をADB(アジア開発銀行)に提出したかどで1年間の実刑と4500万ルピーの罰金が課せられ、ラマに対しては偽のバランス・シートを提出したかどで、やはり1年間の実刑と4500万ルピーの罰金が課せられた。デウバ前首相とシン前建設相、ニラウラ前建設次官、シュレスタ総局長に課せられたそれぞれ4500万ルピーずつの弁償金は、実際の建設コストよりも高い見積もりを立てて、国家が損失を受けた約1億8000万ルピーを4人で当分にした額である。

 判決文が読み上げられるあいだ、デウバ前首相もシン前建設相も顔色を変えずに真っ直ぐ前を見て聞いている。非常に厳しい判決である。聞いてすぐの印象は、汚職があった証拠は明確に示されておらず、問題の建設業者に対する入札のプロセスに問題があったことが判決の理由となっており、判決理由としては非常に弱いものだというものだった。ただし、入札に不正があったこともまた明らかで、デウバ前首相らが完全に無罪であるとも思えなかった。判決文のなかでは、そもそも独立した機関であるプロジェクトに、首相を含めた政府の人間が介入することそのものが不正であると指摘していた。確かにその通りである。デウバ首相は自党の党員である建設業者ジプ・チリン・ラマの会社に入札し、しかもその後、ラマはデウバが党首を務めるネパール会議派(民主)の中央委員メンバーになっている。入札は公平ではなかったと考えるほうが自然である。王室委員会がこのプロジェクトで「汚職があった」という判決を出した根拠となったのは、デウバ氏が首相を務めていた昨年12月に入札のために行った工事にかかる建設費用の見積もりが、委員会が独自に行った見積もりに比べて3億3000万ルピー高かったという点にある。この見積もりコストの差額の分が賄賂として流れたという見方だ。この見積もりに関しては、プロジェクトの最大の投資機関であるアジア開発銀行が匿名のE−メールを通じて「メラムチ・プロジェクトに関連して汚職があった」と知らされたあとに行った独自の調査では、見積もりの額に「不正は見られなかった」と結論づけている。王室委員会はADBとはまったく逆の結論を出したことになる。

 判決が出たあと、デウバ前首相とシン前建設相のコメントをとるために大勢の記者が2人が出てくるのを待っていた。しかし、1時間以上たっても出てこない。そのうち、2人が判決文の署名をするのを拒絶しているという情報が伝わってきた。2人は最初から、汚職統制王室委員会そのものが違法であるとして、聴取に応えることも保釈金を支払うことも拒絶して、拘留されつづけていた。署名を拒絶するのも当然の行為である。1時間半ほど待って、午後5時近くになってようやくまずデウバ前首相が記者たちの前に姿を現した。デウバ前首相は開口一番、「していない汚職で有罪となった」と潔白を主張。記者の質問に対して、「(判決は)政党政治家のイメージを潰す目的で行われたもの。国王の指示によるものだ」とデウバ前首相は発言。「(民主化前に)9年間刑務所にいた経験がある。したがって、刑務所に入ることは怖くはない」と話した。1990年民主化運動のときの最高指導者、故ガネシュ・マン・シンの息子でもあるシン前建設相は、怒った様子で「政治的運動を通じて闘う」と話した。

 汚職統制王室委員会は2月1日に国王が絶対王政を布いてから、国王の任命により発足した機関だ。メンバーは法律の専門家ではなく、発足当初からその「権威」を認めるか否かで問題となっていた。絶対王政に反対する政党は、同委員会が公権濫用調査委員会という汚職に関するケースを扱う機関がありながら、国王は「政党政治家を貶める目的で、王室委員会を違法に結成した」として、王室委員会の存在そのものを認めないことを明らかにしている。プロジェクトに不正があったことは恐らく間違いない。しかし、その罪を裁く機関そのものが法律に基づいて発足した機関ではないために、判決に権威がない。これが、もっともまともな見方だと思う。

7月27日(水曜日)
 今朝、学生リーダーのガガン・タパが逮捕された。12日にロイヤル・アカデミー前で、「王制打倒」「共和制に勝利を」というスローガンをあげているのを聞いたときから、気になっていた。24日の市民デモでも、先頭で過激なスローガンを上げていた。24日に会ったときに、「身の危険は感じていないのか」と聞くと、「今のところ大丈夫」と答えていたのだが、やはり心配していたように逮捕された。今朝、シンガダルバルの警察署内に拘留されている同じ組織のNSU(ネパール学生連合)の副会長に会いに行き、警察署内で拘束されたらしい。あれだけ過激なスローガンをあげておいて、警察署に行くところがガガン・タパらしいと言える。官憲に挑戦したつもりなのか、それとも当局を甘くみていたのか。ニュースによると、当局はタパを動乱扇動罪で起訴する準備をしているという。





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