松岡亞一郎さん (30〜39歳) 
僕が香田証生さんという「一人の命の重み」について考えていると、どうしても『もう一人の香田さん』――どうやったら誤認できたのかサッパリ分からないアラブ系の年配の方の死に行き着いてしまいます。(話題をすり替えるつもりは無いのですが、少し脇道にそれた意見かもしれません。)
何者かに殺された上、失礼にも全く別人に間違われ、あげくクウェートまで運ばれてしまったこの方のご遺体は、その後どうなったのでしょうか。
そして、彼の本当の名前は?
この方が別人だと判明した時、僕も「ぬか喜び」をしました。迂闊にも手をうち叩いて、ガッツポーズまでしてしまいました。まったく僕は、ひどい人間です。「一人死んでいる」という事実に、何の変わりもないのですから……。
その軽率さを彼に侘び、あらためて彼の命をも悼みたいのです。
しかし――何も続報を聞くことができません。
どうしてこんな誤認が起こってしまったのでしょうか。
彼はどういういきさつでお亡くなりになられたのでしょうか。
世界中の一人ひとりの命は平等で、名前があり、人生があり、生活があり、家族や仲間がいる、尊厳のあるべきものです。日本人の同胞も、アジアの同胞も、自衛隊隊員もアメリカ人兵士も――テロリストや凶悪犯でさえ――、みな同じです。一人ひとりの命の重みを、「10万人」と言われるイラク人死者に押し広げる想像力がなければ、いつまでたっても軽佻浮薄な「ジューマンニン」でしょう。
香田さんと等しく、まったく無碍に扱われ、忘れ去られたこの一アラブ人の死体に少しでも私たちが思いをいたす時――私たちの求める答えは、少しずつ、近づいてくるのかもしれません。そう信じます。 |